近年、フランスは環境対策先進国として積極的な環境汚染対策を進めています。
中でもパリは自動車の排気ガスによる大気汚染が以前から指摘されています。
今回は、フランス・パリの交通事情と自動車に変わる交通機関と利用方法をご紹介します。
パリの排気ガス対策
パリ市は1970年代から徐々に市内で走ることのできる自動車を規制してきました。
近年では、パリを含めた複数の都市でCrit’Air(クリテール)というシステムが導入されています。
これは自動車が環境対策にどれくらい順応しているか、を証明するために自動車に貼られるシールで、汚染物質の排出量などにより1〜5段階まで設定されています。
2019年6月からはさらに規制が厳しくなり、Crit’Air4の自動車がパリ市内を走ることができるのは8時から20時まで、さらにCrit’Air5の自動車はパリ周辺を完全に走ることができなくなっています。
というのも、パリ周辺にはブローニュの森やヴァンセンヌの森といった自然があるからです。
パリ市は2024年までに全てのディーゼル車の通行を禁止、さらに2030年までに全てのガソリン車を禁止にする、という目標を掲げています。
かなり高い目標設定のようにも感じますが、フランスの環境汚染への危機感は、行政レベルにおいても日本に比べてかなり高いことがわかります。
市内の深刻な渋滞
パリ市内の自動車通行制限はもちろん環境汚染対策の意味もあるのですが、もう一つ、深刻な渋滞を解消したい、という思惑もあります。
パリ市は街の大きさに比べて自動車の数もかなり多いため、朝夕ラッシュアワーの渋滞は日常の風景です。
フランス人の運転は日本に比べてかなり荒いので、夕方になると街中にクラクションが響きわたります。
さらに、昨今はコロナ感染への懸念があり、メトロやバスなどの公共交通機関を避けて、自家用車で出勤する人が増えています。
昨年のロックダウン解除のときは、今まで以上の渋滞が発生し、パリ市もさらなる規制の必要性を感じたようです。
パリ市は以前より、ナンバープレート(plaque d’immatriculation)の偶数・奇数によってパリ市内を通行できる車を制限してきましたが、今回はCrit’Airを基準にした規制を検討しています。
一方で、メトロなどの公共交通機関の利用や、自転車などの乗り物を奨励しています。
メトロ
メトロは言わずもがな、パリで一番メジャーな交通手段です。
以前と比べ、その利用方法やメトロ内の導線はかなり便利になったのではないかと思います。
日本と同様、ひと昔前は紙の切符が主流でしたが、今ではほとんどの利用者がNavigoというIC券を利用しており、今後紙の切符は廃止されるとのことです。
Navigoには観光客向けのものと、パリ在住者むけのものがあります。
観光客向けのものだと、窓口ですぐに手に入れて、短期間利用が可能です。
日本のIC券と違ってチャージ式ではなく、1週間や1ヶ月の間パリ市内の全てのメトロ・バス・トラムが使い放題になります。
一方、パリ在住者で定期券を手に入れたい場合は、ネットで申し込み後、郵送されるのを待たなければいけません。
しかし、最近はコロナで定期券が必要なくなってきました。
そこで、使った分だけ自動でカードから引き落とされるNavigo liberté+というプランも新しく出ています。
パリ留学をされる方は、メトロを利用する頻度などに応じて自分にあったプランを探してみてください。
最近は契約更新もメトロの機械ではなく、オンラインやスマホからもできるようになっています。
パリの貸し自転車 ”Vélib”
メトロを使うほどじゃないけど歩くと遠い、メトロだと逆に遠回りになってしまう、というときに便利なのが、小回りのきく自転車ですよね。
日本でも最近少しずつ見かけるようになりましたが、フランスは以前より公共の貸し自転車が多くの都市で導入されており、これで通勤・通学をする方も多くいます。
先ほど書いた通り、パリ市は自動車の数を減らそうとしているので、車道に自転車専用レーンも増えてきています。
また、街の至る所に専用駐輪場が設置されており、目的地の近くにある別の駐輪場に返すことができます。
パリでは自分の自転車を持っている人ももちろん多いですが、やはり日本よりも盗難のリスクが大きいです。
Vélibだと盗難の心配をする必要がありませんし、自宅に駐輪スペースがなくても利用できるというのが大きなメリットです。
自転車にはマニュアルと電動が用意されています。
こちらもメトロ同様、様々なプランが用意されています。
観光で数回しか使わない、という方は一回ごとに料金を払うことができます。
また、月に数回使いたい、という方は一年定期もあります。
学生の場合はさらに少し安くなります。
プランには二種類あり、主にマニュアルと電動のどちらをよく利用するかによって変わってきます。
すでにお持ちのNavigoとも連携させることができます。
こちらの自転車ですが、簡単に壊れないように(壊されないように)かなり頑丈な作りになっています。
小柄な方が初めて使用するときは少しよろめいてしまうかもしれません。
もし、自宅周辺に坂が多いようであれば、電動自転車が安くなる一段上のプランをお勧めします。
私はよく電動自転車の料金を出し惜しんでマニュアルで坂を登り、後悔することがあります。
また、自転車の機械が壊れていることもよくあるので、なるべく綺麗で新しそうな台を選ぶようにしましょう。
ブレーキやタイヤのトラブルも少なくなります。
新しい交通手段の発展
自転車だけでなく、パリの人は様々な乗り物をかつ楽しんでいます。
以前までなかった物で既にパリの街に馴染んでいるものといえば、電動キックボードでしょう。
キックボードと言っても、電動なので手元の操作だけでアクセル、ブレーキを調整できます。
自分のスマホにアプリをダウンロードし、支払い方法などを登録するだけで使い始めることができ、自転車と同じくらい便利です。
Vélibと違って専用駐輪場はなく、どこにでも停められる、ということもメリットの一つです。
逆に、問題もいくつかあり、どこにでも停められることをいいことに、自分の家に持ち帰って、同じ台を占有してしまう人もいるんだとか。
そのため、アプリ上で「〇〇通りに3台あります」という表示になっていても、いざそこへ行ってみるとどこにも見当たらない、なんてこともあります。
また、どこにでも停められるため、道のど真ん中のびっくりするようなところに乗り捨てられている光景もよく見かけます。
利用者にとっては便利なものですが、パリの人の中には消極的な意見も多いようです。
また、スケートボードやローラースケート、電動一輪車で移動している人も多いです。
日本では公道での利用が禁止されていることもあり、なかなか珍しいですよね。
パリの人は小さい頃からいろんな乗り物を楽しんでおり、日本人にとっての自転車くらい馴染みの深いものになっているようです。
コロナの影響もあり、パリの交通事情はさらに大きく変化しています。
留学の際は、メトロや自転車だけでなく、日本では体験できない新しい乗り物に挑戦してみてください。
歩くのとはまた違ったパリの風景を楽しめるかもしれません。
