フランス人とは一体どんな人たちなのでしょうか?
多国籍な国ですが、実際に生活してみて感じたフランス人の印象をお話しします。
【「フランス人は冷たい」は本当??】
フランス人は冷たい、とよく言われますが、私の印象では「フランス人は英語を話す人に冷たい」です。
留学当時学校で英語の授業もありましたが、その時に驚いたのは「フランス人は英語を話せない」という事実でした。
もちろんクラスには1〜2人は流暢に英語を話す子もいましたが、おそらく両親のどちらかが英語圏出身だったのではないかと思います。
クラスメイトのほとんどはつっかえつっかえの英語だったり、私の英語のレベルで「あなたは英語が話せるから…」と言われるほどでした。
私が通っていたのがデザインの専門学校であまり英語が必要ない、という理由もあったかと思いますが、正直日本人よりも話せない印象を持ちました。
フランス人はフランス語にプライドを持っているから英語を話さない、とも言われますが、正しくは「あまり英語を話せないから英語で話しかけられたくない。」のではないでしょうか。
スペイン語やイタリア語は、フランス語と同じラテン系言語です。
しかし英語はゲルマン語派の言語で、文法や語彙などもラテン系言語とは異なります。
そういった違いもフランス人の英語習得に歯止めをかけているのかも知れません。
以前ブリティッシュ・エアウェイズで帰国した時に、ロンドンで乗り継ぎをしたことがあります。
シャトルバスでの移動中、英語でアナウンスがありましたが、その時に隣の席のフレンチマダムに「何を言っているの?」と聞かれたので訳してあげました。
その際マダムが放った驚きの言葉が、「なぜフランス語でアナウンスしないのかしら。」でした。
イギリスの空港でフランス語のアナウンスがないと疑問に思うなんて、日本人の感覚ではありえませんよね。
またパリの薬局で買い物をしている時に日本人の旅行者がフランス人の店員に英語で話しかけて冷たくあしらわれ、「やっぱりフランス人は冷たいよな。」と言っているのが聞こえ悲しくなったことがあります。
少しでもフランス語で話しかけると態度が全然変わるよ、と教えてあげたくなりました。
まだ自分自身のフランス語がつたなかった頃の話ですが、フランス人に道を聞いても皆さん根気よく話を聞いてくれました。
フランス人はフランス語を話すと態度が180度変わるので、フランス旅行に行った際には、会話帳を見ながらでもフランス語でお話しされることをおすすめします。
あとお店に入る時は「Bonjour(こんにちは)」、出る時は「Au rebvoir(さようなら)」を忘れずに。
【気さくで陽気で陽気なフランス人】
フランス人はラテン系で、初めて会った人にもとても気さくに、まるで友達のように話しかけてきます。
それまで白人と言えばアメリカ人としか交流のなかった私にとっては驚きでした。
やはりそれも「フランス人は冷たい」という先入観があったからも知れません。
クラスメイトもとても親切で、留学生というのに気を使ってくれて「わからないところはないか?」などと聞いてくれたりしました。
そしてゲイパレードなどを見るとわかるかと思いますが、フランス人は本当に陽気です。
減点主義ではなく、加点主義で人を見る人が多いので、ポジティブな人が多い印象です。
【助け合いの精神溢れる優しい人たち】
街で困っている人などがいると、放っておけず必ず声をかけてくれます。
一度白杖を持っている、目の見えない黒人の方が突然街中で「XXに行きたいから誰か連れて行って!」と人差し指を上げながら介助者を募っていたことがあります。
その時はたまたますぐ側にいたので、腕を組んでその場所まで一緒に歩きました。
日本で障害をお持ちの方が自分から大声で介助者を募るなんて考えられませんね。
これも「困った時には必ず誰かが助けてくれる」という精神が前提にあるからこそできる行為だと思います。
またフランス人の友人が日本にきた時に驚かれた光景があります。
その友人家族と夕飯を食べ終わり電車に乗っていたところ、車内にグダグダに酔っ払い、扉のところに寄っかかって座っている男性がいました。
もちろん車内の人たちはその男性がいるのは分かっています。
そのうちその男性が舟を漕ぐようになり、次の停車駅で扉が空いた時にホームにはみ出るような形になりました。
とても危なかったので男性の上半身を車内に押し戻そうとしたところ、男性2名が一緒に椅子に座らせるのを手伝ってくれました。
それを見たフランス人が「なぜみんな分かっているのに初めから椅子に座らせてあげないんだ。危ないじゃないか。」と言っていました。
日本人はおそらく初めに行動するのが恥ずかしいだけで、誰かが動き出すと手伝ってくれます。
「博愛の精神」という宗教観の違いもあると思います。
ただフランス人は人目を気にせず、自分の思った通りに行動するので、困った人がいたら放っておけず助けてあげるのだと思います。
【個人の裁量が大きい】
フランス人は、通り一遍の対応だと、うわべの付き合いのまま終わってしまうことがあります。
こちらが素直な感情を見せることで向こうの対応が大きく変わることがあります。
例えば、マレ地区のとても素敵なお店に入った時のこと。
お店にある洋服からバッグからすべてが可愛く、自分の好みに合っていたので興奮してお店の人に「ここのお店のもの全部可愛い!全部欲しいくらい!」と話したところ、お店の奥からCDやら小物やら色々な物を持ってきてくれました。
お店の人も嬉しかったのでしょう。
もちろんすべていただいて帰りました(笑)。
これがただ「Bonjour」だけだったら、CDも小物も出してくれなかったと思います。
また小銭が足りなかったり、ないメニューがあったりしても「ダメ」「ない」ではなく、個人の裁量が大きいので柔軟に対応してくれるところが多いです。
他にはアルバイト先 である日本料理店で盗難に遭い、警察に届けを出しに行った時にたらい回しにされたことがあります。
まず最初にアルバイト先の管轄の警察署に行ったところ「これはうちじゃない、住んでいるところが管轄だ。」と言われ、自分の住んでいる警察署に行ったところ「これはアルバイト先のあるところが管轄だ。」と言われまた戻る羽目になりました。
盗難被害にも遭い、メンタルはボロボロなのにこの対応は応えました。
そしてまたアルバイト先のある区の警察署に戻ったところ「これはうちじゃない。」と言われ…相当応え、涙を流したところ「わかったわかった、うちでやるから。」とのことでした。
だったら初めから対応してくれればいいのに…しかも泣いたら対応してくれるというのもどうなのか。
泣かなかったらまたたらい回しにされていたのか…。
というわけでフランスではルールに則って行動するのではなく、個人個人で対応が全く違います。
「お客様は神様」ではなく、ちゃんと個人として接してくれます。
対等な関係はお店の人にとっても、お客側にとっても健全な気がします。
【恋愛至上主義】
これはフランス映画そのままという感じです。
日本の有名人でパリに渡った方達のその後の様子を見ても、長くフランスに住み「恋愛至上主義」に価値観が変わったんだなあ、と感じることがあります。
おそらく彼女たちも日本にそのまま住んでいたら世間体もあるため、今とは別の行動を取っていたのではないでしょうか。
そう、フランスには「世間体」は存在しません。
両親がいて、子供がいて、という一般的な基準がありませんし、気にしません。
自分が好きだったら一緒にいるし、好きでなくなったら別れるだけです。
子供がいても同じです。
なのでフランスでは手続きの大変な「結婚」より「PACS」を選ぶ人も多くいます。
「PACS」とは民事連帯契約のことで、同性カップルや事実婚の方が選択することが多いです。
私の通っていた学校でも学校長(男性)の前妻が同じ学校内にいるのに、別の教員(女性)との間に子どもができていました。
本人たちに気持ちを確認したわけではないのですが、嫌ではないのでしょうか…日本だったらどちらかが異動になりそうですが。
この辺りの感覚も日本人とは違うのかもしれません。
個人的には「恋愛至上主義」は自分の気持ちに素直でいいけど大変だな、という印象です。
少し気持ちが離れても長く一緒にいることでまた気持ちが戻ったり、別の感情が湧いてくることもあると思います。
あまりダラけた姿も見せられず、大変そうなので自分は「日本風」のままで良いと感じました。
以上、一留学生から見たフランス人の印象でした。

東京都生まれ。著書に「フランス留学失敗」(Amazon Kindle Store)。パリのデザインの専門学校に留学していました。パリで学んだことを生かし、現在デザイナーとして生活しています。留学中は辛いことも多かったですが、それでも実際に留学し、得たことは何ごとにも代えがたいです。もし留学に迷っている人がいれば迷わず背中を押してあげたいです!